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ロード・ジム
![]() | ロード・ジム (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集) (2011/03/11) ジョゼフ・コンラッド 商品詳細を見る |
主人公のジムはパトナ号の航海士だったが、巡礼者を乗せた航海中にパトナ号が座礁し、ボートが足りないために船長をはじめ他の航海士はあろうことか乗客を見捨ててこっそり逃げ去ろうとする。一悶着の末に、ジムは結局そのボートに乗り込んでしまい、さらにパトナ号は沈まずに乗客は救助され、船員は裁判にかけられる。そして裁判中に知り合ったマーロウを通じてこの物語は語られる。
いざという場面で人はどう行動するか、という普遍的なテーマを扱った物語。
そして、人は失敗から逃げつつ挽回はできるのか、という、もう一つのテーマもある。
110年前の小説ながらまことに今日的な命題で、これは全然他人ごとでは済ませられない、身につまされる話だった。
一般論。
人はみな自分の中の理想像と、受け入れなければならない自分との折り合いをどこかでつけて生きていて、その理想像と現実の乖離が大きくなると折り合いがつけれない。
前半はそこに苦しむアンビバレンスなジム、という印象。
後半は雰囲気ががらりと変わり、異常に危なっかしい勢いでロード・ジムと呼ばれる自分の王国をつくっていく物語。
総じて重くて暗くて苦しくてペシミスティックで、人間の持っている底の見えない闇を扱った、器の大きくて深い物語だった。
春を恨んだりはしない 震災をめぐって考えたこと
![]() | 春を恨んだりはしない - 震災をめぐって考えたこと (2011/09/08) 池澤 夏樹 商品詳細を見る |
またやって来たからといって
春を恨んだりはしない
例年のように自分の義務を
果たしているからといって
春を責めたりはしない
わかっている わたしがいくら悲しくても
そのせいで緑が萌えるのが止まったりはしないと
(シンボルスカ・『眺めとの別れ』沼野充義訳)
書き手は簡単にこの本は書いてないな、ということが伝わってくる。
読み手も同じように戸惑いながらゆっくり読んで、読み直した。
絶対的な原則として、人の命を数に還元することはできない。
多数の人が亡くなったと考えるのではなく、一人の人が亡くなった事が同時に起きたと考えるべきだが、あまりにも多くの命が同時に失われてしまい、あまりにも唐突に自分の日常からかけ離れた出来事が起こったため、わたしは今も、この後もどう関わっていったらいいのか、困惑し、戸惑うばかりである。
そしてその後の原発関連のこと。
ことが起こった後に騒ぎ立てて批判だけをするのは無意味だし、自分がそうありたいとは思わないのだが、かといって無視できるような問題でもない。
極論に走らないで社会を変えていきたいという、緩やかな意志と具体的な方策を粘り強く示してしていると思う。
本当の作家の仕事というのはそういうものかとも思う。
ユリシーズの瞳
![]() | テオ・アンゲロプロス全集 DVD-BOX II (ユリシーズの瞳/こうのとり、たちずさんで/シテール島の船出) (2004/06/19) ハーヴェイ・カイテル、マルチェロ・マストロヤンニ 他 商品詳細を見る |
映画誕生百年にあわせたアンゲロプロスの国境三部作の最後の一作。
いうまでもなく『オデュッセイア』を下敷きにした作品。
映画監督の主人公Aもオデュッセウスであり、アンゲロプロスのAだから監督自身も投影されている。
主演はハーヴェイ・カイテル。
この人は脚本がオースターの『スモーク』でも見た。
舞台かいって突っ込みたくなるぐらいに、やたらセリフだらけの映画だった気がする。
アンゲロプロスの作品で英語が使われていることにちょっと変な感じがした。
レーニン像が河を行く映像なんかは結構頭の中に印象として残る。
国境を越えるときなんかは3カ国語ぐらいで質問があったりして面白い。
この作品が撮られた当時はまさに旧ユーゴ紛争のとき。
映画の後半の舞台は戦火のサラエボ。
そしてこの映画のためにサラエボでロケしようとした!
が、サラエボ行きの飛行機を待っているそのときに、サラエボで爆撃が再開されたから行けなかったらしい。
アンゲロプロスは戦争をそのまま映像にしない。
鑑賞者に提示されるのは、砲撃後の崩れたビル、燃える車、そして画面外で続く砲撃の音。
『旅芸人の記録』でもいろいろな場面で同じ手法があったことを思い出す。
人間は単に映像が与えられるよりも、与えられた情報から想像力を働かせるほうが影響を受けるし、愉しいし、怖いし、見ている人間の心の中でいろいろな感情が渦巻くものだ。
映画なのに敢えて見せないっていうことは過激なことだと思う。
本作は今まで見てきたアンゲロプロスの映画でよくある手法も踏襲しているし、一方でフラッシュバックを使ったり、現代のサラエボを舞台にしたり、映画関係者に捧げるノスタルジックなセリフがあったりして、いつもとは違う雰囲気も少し漂っていた。
モンキービジネス 2011 Summer vol.14 いま必要なもの号
![]() | モンキービジネス 2011 Summer vol.14 いま必要なもの号 (2011/07/20) 柴田 元幸 商品詳細を見る |
震災を受けての内容が多かった。
エミリー・ディキンソン・柴田訳の詩は、とてもとても、今必要なものなんじゃないだろうか。
Webで一部読める。
ここをクリック
『音楽と生活』 小沢健二
先号の叔父さんに続いて。
そういえば柴田ゼミ出身だったのね・・・。
『小さな枠組みの中だけで活発に議論する』っていうマインドセットを外すことはとても重要だし、『かなりおもしろいし、怖いし、良いことのように』、わたしも最近思っているところだ。
端的なところだと、最近ますますテレビを見なくなった。
日常が静かでいい。
まちへ(『ヴェネツィア暮らし』から)
矢島翠という人を初めて知った。
なるほど、須賀敦子と友人ということが文章からよく伝わってくる。
ヴェネツィア、魅惑の都市ね・・・・。
モンキービジネスこそが今必要なものなんだが、次号を最後に休刊ということが本当に惜しまれる。
モンキービジネス 2011 Spring vol.13 ポール・オースター号
![]() | モンキービジネス 2011 Spring vol.13 ポール・オースター号 (2011/04/20) 柴田 元幸 商品詳細を見る |
今号はまさに柴田さん的なタイトル。
本書の『私はジャガイモ』(オースターと柴田さんの対談)は以下で見られる。
ここをクリック (自分の幼児並みの英語力を呪う動画が見られる)
オースターはベケットから文学的な影響を受けたということは度々とりあげられていたので知っていたが、実際に少し交流があったと知って驚いた。
オースターは毎回質の高い作品を書く。
抜群の安定感、透明感のある文体、心地よいリズム、当然ながらわたしも好みの作品が多い。
私の幼児並みの英語力では堪能できないが、オースターの英語は原書でも読みやすく、それでいて深みもあるなぁと思う。
小澤征爾さんと、音楽について話をする 聞き手 村上春樹
なんて贅沢な対談なんだろう。
音楽素人から見たら、素人離れした村上春樹の繰り出す質問と、それに答える小澤征爾の小澤節。
村上春樹が「やばい」って言葉を使っていたのがなんとなく新鮮だった。
この対談で度々挙がったグールドをもっと聴きたいと思っていて、コロンビアのコンプリートボックスに目をつけているのだが、中古品の価格がどんどん高騰していき手が出せないので諦めているところである。
楽しく生きるにはタイミングと決断が重要なのだ・・・・。
象とトランペット -『ダンボ』の深層-
ダンボって映画はまともに見たことがないが、グローバル化する前の古きディズニー映画はいろんな深い考察ができるものだ。今度映画を見てみようか。
あかずの日記
いつもどおりにおもしろい。
さっちゃんに好きだと告白したいことをここに記しておく。
いつものように楽しい本だった。
なんて。






